2014年11月20日木曜日

23. 松嶋(昼)

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【現代読み】
(そもそも) ことふりにたれど、 松嶋は扶桑(ふそう)第一の好風(こうふう)にして、
(およ)そ洞庭(どうてい)・西湖(せいこ)を恥(はじ)ず。
東南より海を入れて、 江の中(うち) 三里、
浙江(せっこう)の潮(うしお)を湛(たた)う。 嶋々の数を尽して、 
(そばだ)つものは天を指(ゆび)さし、 伏すものは波に匍匐(はらば)う。 
あるは二重(ふたえ)にかさなり、 三重(みえ)に畳(たた)みて、 
左に分かれ、 右に連(つら)なる。 
(おえ)るあり、 抱(いだけ)るあり、 児孫(じそん)愛すがごとし。 

松の緑こまやかに 枝葉(しよう)汐風(しおかぜ)に吹きたわみて、 
屈曲(くっきょく)おのずから 矯(た)めたるがごとし。 
その気色(けしき) 窅然(ようぜん)として、 美人の顔(かんばせ)を粧(よそお)う。 
ちはや振(ふ)る 神の昔(むかし)、 大山祇(おおやまづみ)のなせる業(わざ)にや。 
造化(ぞうか)の天工(てんこう)、 いづれの人か 
筆を振るい、 詞(ことば)を尽くさむ。

【語句】
ことふりにたれど: 言いふるされたことだが。
 『源氏物語・枕草子などにことふりにたれど、おなじ事また今さら言はじとにもあらず』(「徒然草」十九段)
扶桑第一の好風: 「扶桑(ふそう)」は昔の中国で東方海上にある日の出づる国にあると言われた神木のことで、それが転じて「日本国」を指すようになった。 「好風(こうふう)」は「好い風景」を略した言葉。
洞庭・西湖を恥ず: 洞庭湖西湖 のことで、どちらも風光明媚な中国の景勝地。 古来さまざまな詩文にうたわれ、絵画にも描かれてきた。 それらと比べても見劣りがしない、ということ。
浙江の潮を湛う: 浙江省を流れる河川「銭塘江(せんとうこう)」のこと。 河口付近は潮の干満の差が激しく、南米アマゾン川のポポロッカのように海の水が川に逆流する海嘯(かいしょう)が発生することで知られる。

窅然(ようぜん)として: 当時の使い方としては、「うっとりするさま」、「ほれぼれとするさま」とある。 「(よう)」は穴と目で、くぼんだ目の意。 現代の辞書では、1.「奥深く遠い様」、2.「嘆いてぼんやりしている様」となる。
美人の顔(かんばせ)を粧(よそお)う: 
 蘇軾(そしょく、又は蘇東坡)が、西湖の美しさを伝説の美女・西施(せいし)にたとえた詩「飲湖上初晴後雨」の、
『欲把西湖比西子 淡粧濃抹總相宜 (西湖をもって西施に比せんと欲すれば 淡粧濃抹すべて相よろし)』
意味:「西湖の様子を西施に比べれば、薄化粧も厚化粧も(晴れても雨でも)全て素晴らしい。」―に比している。
ちはや振(ふ)る: 「神」に掛かる枕詞(まくらことば)。
大山祇(おおやまづみ): 「室の八嶋」に出てきた「木の花のさくや姫」の父親で、「大いなる山の神」という意味になる。



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