2014年11月8日土曜日

35. 羽黒山(六月三日・四日)

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【現代読み】
六月三日、 羽黒山(はぐろさん)に登る。

図司左吉(づし・さきち)と云ふ者を尋(たづ)ねて、 
別当代(べっとうだい) 会覚(えがく)阿闍梨(あじゃり)に謁(えっ)す。
南谷(みなみだに)の別院に宿(やど)りして、
憐愍(れんみん)の情(じょう)こまやかに
あるじ せらる。

四日、 本坊に於いて 俳諧興行(はいかい・こうぎょう)

 有難(ありがた)や 雪をかをらす 南谷

【語句】
六月三日: 現在の7月19日。 陰暦では三ケ月の頃。
羽黒山(はぐろさん): 山形県にある出羽三山の一つで、山頂にそれぞれ神社がある。
図司左吉: 図司は本姓で、のちに母方の姓・近藤を称した。羽黒山麓の手向(とうげ)村の人。染物業を営む。俳号は露丸(呂丸とも)。芭蕉の滞在中に世話をし、芭蕉からの教示を書きとめた「聞書(ききがき)七日草」がある。
別当代: 一山の寺務を統括するのが「別当」で、その「代理」の職。 別当には江戸・東叡山の僧が就任、羽黒山にはその代理が置かれたということ。

会覚(えがく): 京都の人で、貞享四年から元禄四年まで別当代。
阿闍梨(あじゃり): 天台宗の高僧に与えられる称号。
南谷の別院: 本坊である別当寺の別院としての、高陽院紫苑寺。
あるじせらる: 客をもてなすこと。
本坊: 住職の坊舎。 若王寺宝前院。
俳諧興行: 「俳諧」は「俳諧の連句」の略、「興行」は「とりおこなうこと」

「曾良旅日記」
三日: 申の刻、近藤左吉の宅に着く。本坊より帰りて会す。本坊若王寺別当執行代和交院へ。大石田・平右衛門より状添。露丸(左吉)子へ渡す。本坊へ持参、再び帰りて、南谷へ同道。祓川の辺りより暗く成る。本坊の別院所也。
四日: 天気吉。 昼時、本坊へ蕎麦切りにて招被(まねか)る。 会覚に謁す。南部殿(盛岡藩主・南部重信)御代参の僧 浄教院・江州円入に会す。俳(諧)、表計(ばかり)にて帰る。三日の夜、希有(けう:まれに)観修坊釣雪(京の僧で花洛とも)に逢う。互いに涕泣す。

「曾良・俳諧書留」 羽黒山本坊におゐて興行 元禄二、 六月四日
 有難や 雪をかほらす 風の音  翁
 住程人のむすぶ夏草  露丸
 川船の つなに蛍を 引立て  曾良
 鵜の飛跡に 見ゆる三ケ月  釣雪
 澄水に 天の浮べる 秋の風  玉妙
 盃の さかなに流す 花の浪  会覚


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