2014年11月7日金曜日

36. 羽黒権現

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【現代読み】
五日、 権現(ごんげん)に詣(もう)づ。 
当山開闢(とうざん・かいびゃく) 能除大師(のうじょ・だいし) 
いずれの代(よ)の人と云う事を知らず。 
延喜式(えんぎしき)に 「羽州里山(うしゅう・さとやま)の神社」 と有り。 
書写(しょしゃ)、 「黒」の字を「里山」となせるにや、 
羽州黒山を中略して 羽黒山と云ふにや。 
出羽(でわ)といえるは、「鳥の毛羽(もうう)を此の国の貢(みつぎもの)に献(たてまつ)る」
と、 風土記(ふどき)に侍(はべ)るとやらん。
 
月山(がっさん) 湯殿(ゆどの)を合せて三山(さんざん)とす。 
当寺、武江東叡(ぶこう・とうえい)に属して、天台止観(てんだい・しかん)の月明らかに、 
円頓融通(えんどん・ゆづう)の法(のり)の灯(ともしび)かゝげそいて 僧坊棟(そうぼう・のき)を並べ、 
修験行法(しゅげん・ぎょうほう)を励まし、 霊山霊地の験効(げんこう)、 
人貴び 且(か)つ恐る。 
繁栄 長(とこしなえ)にして、 めで度(たき) 御山(おやま)と謂(いい)つべし。

【語句】
羽黒権現: 羽黒山の山頂にある出羽(いでは)神社のこと。 権現(ごんげん)とは、「仏教の仏(ほとけ)が衆生(しゅじょう)救済のため、日本の神となってこの世に現れること」。
能除大師: 能除太子とも。崇峻(すしゅん)天皇の第三子・蜂子皇子(はちこのおうじ)といわれる。父の崇峻天皇が蘇我馬子に暗殺されたため、馬子を逃れて船で北へ向かい、足が三本ある大烏(ヤタ烏)に導かれてこの地にたどり着いたとされる。
延喜式に: 「延喜式」ではなく、「東鑑(あづまかがみ)」の誤り。
風土記に侍る: これも「出羽国風土記」は伝存せず、「継尾集」の序文にそうした記述があるとのこと。

三山とす: 出羽三山のこと。
武江東叡: 江戸・東叡山・寛永寺。
天台止観: 天台宗の最も重要な修行法で、雑念を止め、正智でもって対象を観ること。
円頓融通: これも天台宗の教理。 高徳が円満にして成就すること。
験効: 霊験の効能で、有難い御利益(ごりやく)のあらわれ。

「曾良旅日記」
五日: 朝の間、小雨す。昼より晴る。昼迄断食して(翌日の三山巡礼のために潔斎した)、注連(しめ)かく。夕飯過ぎて、先ず、羽黒の神前に詣。帰、俳、一折に満ちぬ。

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