2014年10月17日金曜日

44. 市振・夜(七月十二日)

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【現代読み】
今日は「親知らず・子知らず」、「犬戻り」、「駒返(こまがえ)し」など云う
北国(ほっこく)一の難所を越えて 疲れ侍(はべ)れば、枕引き寄せて寝(いね)たるに、 
一間(ひとま)隔て 面(おもて)の方に若き女の声 二人ばかりと聞こゆ。

年老(としおい)たる男(おのこ)の声も交(まじ)りて物語するを聞けば、
越後の国 新潟と云う所の遊女(ゆうじょ)なりし。
伊勢参宮するとて 此の関まで男(おのこ)の送りて、
明日は古里(ふるさと)に返す文(ふみ)したためて、
はかなき言伝(ことづて)など しやるなり。

白浪(しらなみ)の寄する汀(なぎさ)に 身を放(ほう)らかし、
海女(あま)のこの世を あさましう下(くだ)りて、
(さだ)めなき契(ちぎり)、 日々の業因(ごういん)いかにつたなし と、
物云うを聞く聞く 寝入りて、

【語句】
親知らず: 親不知(おやしらず)は海岸線が断崖になった、北陸道一の難所。 他にも幾つかの難所があり、芭蕉は早川という所でつまづいてずぶ濡れになったようである。(曾良・旅日記)

伊勢参宮: 「越後の習いにて、諸民一生の内、参宮せぬは一人もなし」(「奥のほそ道解」)。 この年は伊勢神宮の遷宮があり、芭蕉も大垣から伊勢に向かっているので、特に伊勢参りをする人が多かったらしい。

白浪の寄する汀に: 「しらなみの よするなぎさに 世をすぐる あまのこなれば やどもさだめず」(「和漢朗詠集」)



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