2014年10月14日火曜日

47. 加賀・金沢(七月十五日)

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【現代読み】
卯の花山(うのはなやま)、 倶利伽羅(くりから)が谷を越えて、
金沢は 七月 中の五日(なかのいつか)也。 
(ここ)に大阪より通う商人 何処(かしょ)と云う者有り。
それが旅宿(りょしゅく)を共にす。

一笑(いっしょう)と云う者は、 此の道に好(す)ける名の
ほのぼの聞こえて、 世に知る人も侍(はべ)りしに、
去年(こぞ)の冬 早世(そうせい)したりとて、
その兄 追善(ついぜん)を催(もよお)すに、

 塚も動け 我が泣く声は 秋の風

  ある草庵に 誘(いざ)なわれて
 秋涼し 手毎(てごと)にむけや 瓜茄子(うり・なすび)

  途中 吟(ぎん)
 あかあかと 日は難面(つれなく)も 秋の風

  小松と云ふ所にて
 しをらしき 名や小松吹く 萩(はぎ)すすき

【語句】
卯の花山: 歌枕として知られ、砺波山(となみやま)辺りと考えられる。
 『かくばかり 雨の降らくにほととぎす 卯の花山に なほか鳴くらむ』(万葉集」十・柿本人麻呂)

倶利伽羅峠(くりからとうげ): 富山(越中)と石川(加賀)の境にある砺波山(となみやま)にある峠。 木曽義仲が平家の大軍を破った倶利伽羅峠の戦い(くりからとうげのたたかい)の古戦場として有名。
七月 中の五日: 七月十五日のことで、現在の8月29日。

何処(かしょ): 「蕉門諸生全伝」に、「大阪人、享保辛亥六月十一日卒」とあり、「猿蓑(蕉門句集)」に二首入選している。
一笑(いっしょう): 加賀俳壇の有力者。 芭蕉の来訪を待つことなく、元禄元年十一月没。享年三十六歳。
その兄 追善を催す: 七月二十二日に金沢・願念寺で一笑の冥福を祈って句会が行われ、「曾良・俳諧書留」にも句が残されている(後述)。
塚も動け: 「塚」は「墓石」のこと。

七月十五日に金沢入りした芭蕉は、二十四日に発つまで十日ほど金沢に滞在し、何度か俳諧を行っている。 
曾良は十七日に初めて病気(腹)の記述が出てくるが(その後の二日間は記述無し)、その後も治る気配が無く、八月五日には芭蕉と別れて先に長嶋へと旅立っている。
  「曾良・旅日記」
七月十五日(現在の8月29日): 快晴。高岡を立つ、埴生八幡(倶梨伽羅峠の山麓付近にある神社)を拝す。源氏山(倶梨伽羅峠の南東にある)・卯の花山也。倶梨伽羅を見て。未の中刻(午後二時半頃)、金沢に着く。
京や吉兵衛に宿借り、竹雀・一笑へ通ず、即刻、竹雀・牧童(立花氏。通称:研屋彦三郎。北枝の兄)同道して来て談。一笑、去十二月六日死去の由。

十六日: 快晴。己の刻(午前九時半頃)、駕籠(かご)を遣して竹雀迎え、川原町、宮竹屋喜左衛門方へ移る。段々各来る。謁す。

十七日: 快晴。翁、源意庵へ遊(あそば)る。予は病気故、不随(したがはず)。今夜、丑の比(午前二時頃)より雨強く降て、暁止む。

十八日: 快晴。

十九日: 快晴。各来。

廿日: 快晴。 庵(一泉の松幻庵で、犀川のほとり)にて一泉(斉藤氏)饗。 俳(後述)、一折有て、夕方野畑(野端山:金沢市内)に遊ぶ。帰て、夜食出て散ず。子の刻(午前零時頃)に成。

廿一日: 快晴。高徹(医師・服部元好:北枝と親交あり)に逢い、薬を乞う。翁は北枝(牧童の弟で立花氏。兄と同じ刀研師。蕉門十哲の一人)一水同道にて寺に遊(あそば)る。十徳二つ。十六四。

廿二日: 快晴。 高徹、見廻(みま)ふ。亦(また)、薬請(くすりう)く。
此の日、一笑追善会(ついぜんえ)、於、願念寺興行。各朝飯後より集る。 予、病気故、未の刻(午後二時頃)より行く、暮過ぎ、各に先達(さきだって)帰る。亭主、丿松(べっしょう:一笑の兄)。

廿三日: 快晴。 翁は雲口(小野氏・町人)主(あるじ)にて宮ノ越(宮ノ腰:金石町)に遊る。 予、病気故、不行(ゆかず)。江戸への状、認(したた)む。鯉市(鯉屋市兵衛:杉風のこと)・田平(田中平丞)・川源(川合源衛門:長嶋藩主)へ也。
高徹より薬請く。以上六貼(でふ)也。今宵、牧童・紅爾等、滞留願。

廿四日(現在の9月7日): 快晴。金沢を立つ。小春(宮竹屋の三男)・牧童・乙州(川井氏。近江の輸送業者)町外れまで送る。雲口・一泉・徳子等、野々市まで送る。餅・酒等持参。申の上刻(午後三時半頃)、小松に着く。

  「曾良・俳諧書留」
  一笑・追善
塚もうごけ 我泣声は 秋の風  翁
玉よそふ 墓のかざしや 竹露  曾良

  七月廿五日 小松山王会
しほらしき 名や小松吹 萩薄(はぎ・すすき)  翁

  廿六日 同・歓水亭会 雨中也
ぬれて行や 人もおかしき 雨の萩  翁
心せよ 下駄のひびきも 萩露  曾良
かまきりや 引こぼしたる 萩露  北枝

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