2014年10月3日金曜日

58. 気比神社(十四夜)

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【現代読み】
気比(けひ)の明神(みょうじん)に夜参(やさん)す。
仲哀(ちゅうあい)天皇の御廟(ごびょう)也。
社頭(しゃとう)(かみ)さびて 松の木(こ)の間に月の漏(も)り入りたる、
御前(おまえ)の白砂(はくさ) 霜を敷けるがごとし。

往昔(そのかみ)遊行(ゆぎょう)二世の上人(しょうにん)、
大願発起(たいがん・ほっき)の事ありて、
(みづか)ら草を刈り、 土石を荷(にな)い、泥渟(でいてい)を乾かせて、
参詣(さんけい)往来の煩(わずら)いなし。 古例(これい)今に絶えず、
神前に真砂(まさご)を荷(にな)い給(たま)う。
「これを遊行の砂持(すなも)ちと申し侍(はべ)る」
と、 亭主の語りける。

 月清し 遊行の持てる 砂の上

十五日 亭主の詞(ことば)に違(たが)わず雨降る。
 名月や 北国(ほっこく)日和(びより) (さだ)めなき

【語句】
気比の明神: 気比神宮(前出)のこと。 北陸道総鎮守と称される。
仲哀天皇(ちゅうあい・てんのう): 第十四代天皇で、「象潟」の段で出てきた神功皇后(じんぐうこうごう)の夫。
御前の: 「御前」は「貴いものの前」ということで、神前の意。 

遊行二世の上人: 「遊行上人(ゆぎょう・しょうにん)」は一遍上人の別称だが、「遊行二世」はその弟子「他阿(たあ)」のこと。 ちなみに「遊行(ゆぎょう)」とは、僧侶が布教や修行のため各地を巡り歩くこと。
遊行の砂持ち: 「遊行上人」の名を嗣ぐ者が、代々神前に砂を運んで撒く行事。
『「遊行の砂持ち」は、其の後代々の上人廻国の時、かならず此の地に来り、砂石をはこび、社頭の前後左右に敷き申さるる事、今に至りて断絶なし。』(「菅菰抄」)

名月や: 旧暦十五日は「中秋の名月」だが、その日は雨で月は出ていない。 亭主の言葉通りで、そのお陰で前の句がある。



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